高次脳機能障害の医療調査(令和1年/5級2号)
高次脳機能障害の医療調査(令和1年/5級2号)
脳挫傷、外傷性クモ膜下出血後の高次脳機能障害にて通院中の患者に関する事実証明事案。経過状況を確認した際、高次脳機能障害の残存を否定する文言が散見され、担当弁護士に報告、指示を受けてこの対策に注力した。医証収集においてはこのように「先回りしてエビデンスを集める」ことが極めて重要であり、これを怠って厳しい結果が出た後に慌ててもほとんどの場合は手遅れとなる(「ダメなら異議申立てがある」という専門家は信用してはいけない。「この1回しか無いと思って準備しろ」が常に正解)。その後、神経心理学的検査の依頼、結果票の確保、過不足の無い後遺障害診断書類の収集、自宅や勤務先を訪問しての日常生活状況に関する取材活動、整理、弁護士への報告等を行い、調査終了に至る。
なお、重めの脳外傷事案は嗅覚障害等の『派生する後遺障害』が併存することが多いが、本件では幸いに嗅覚、味覚、視覚、聴覚等には異常が無かった。私の過去の実例で、他の全ての調査が完了し、後は後遺障害診断書類を弁護士に提出するだけという状況で、長らく調査を担当したことへの御礼がしたいという有難い言葉を頂戴し、被害者の方にカレーを御馳走になった際、そこではじめて、ぽつりと、「実は事故の後、何を食べても味が全然わからないんですよ」とその方が漏らしたことで味覚障害の残存が発覚し、追加調査、部分的な調査のやり直しが必要となった苦い経験がある。このように、案外、御本人は味覚や嗅覚の障害についてケロっとしているところがあり、放っておいては訴えが出てこないケースも多いので、先回りして、なるべく早く、医証上、因果関係の問題が生じる点への対策等も意識しながら、率先して担当者側から質問する必要がある。